周囲を築地塀に囲まれ、一歩足を踏み込むとまるで別世界に来たような心地よい空気に包まれる「旧古河庭園」。武蔵野台の地形を活かし、高台にはレンガ造りの洋館を建て、斜面には様々なバラが咲く洋風庭園、低地には風雅な日本庭園が配されています。
もとは明治の元勲・陸奥宗光の本宅でしたが、次男が古河財閥の養子になったことで古河家の所有となりました。洋館と洋風庭園の設計は、明治から大正にかけて、鹿鳴館やニコライ堂などを手がけた英国人建築家ジョサイア・コンドル。大正6年竣工以来、歴史上大きな役割を果たしてきた格式ある建物です。日本庭園は小川治兵衛作。ともに大正初期の庭園の原型をとどめる貴重な存在として、平成18年には、国の名勝に指定されました。
小高い丘に建つ洋館の石垣にはツルバラやモッコウバラが絡まり、洋館の周囲のバラ園には「ピース」「ダブルディライト」「ロイヤルプリンセス」などのバラが全部で90品種180株植えられています。2年前からは青いバラのコーナーも作られました。
「一般的な植物園とは異なり、風景の中に溶け込むバラの美しさを楽しめるのが最大の魅力です」と副センター長の進藤理恵さん。単体のバラの美しさはもちろん、異国情緒漂う空間のなかでの美しさに注目してほしいとのこと。「桃香」「芳醇」といった日本生まれのバラも多く、ここにも和と洋の絶妙のバランスを感じます。
洋館から見下ろす位置に広がるバラ園は、左右対称の幾何学模様の刈り込みが施されたフランス整形庭園。整然と刈り込まれた緑にバラの鮮やかさが一層映え、重厚な洋館との対比が見事な景観美を生み出しています。緑とバラの色のコントラストを楽しみながら小路をゆくと、絵本の中に迷い込んだようなロマンティックな気分になります。
バラ園から続く階段の左右にはツツジ園があります。和の美しさを感じながら道なりに進み、シイを主体にした深い植え込みを抜けて日本庭園へ。池を中心にして、10数メートルの高所から流れが落ちる大滝、御影石などを用いて造られた枯滝、雪見灯篭や築山など、日本庭園の粋を集めた名園です。茶室もあり、春と秋はお抹茶をいただくこともできます。(一服500円)
サクラやツツジ、バラが咲く春や緑が美しい夏、紅葉に染まる日本庭園とバラを一緒に見られる秋、ウメやツバキの冬と1年中楽しめる旧古河庭園。いろいろなお客さまが訪れるそうですが、さらに多くの方に多彩な楽しみ方を知って欲しいと、洋館横の芝生広場を開放して「バラの音楽会」や、閉園時間を延長して「バラと洋館のライトアップ」などのイベントも行っています。(期間限定。詳細は問い合わせを)
〒114-0024 東京都北区西ヶ原1-27-39
03-3910-0394(旧古河庭園サービスセンター)
●開園時間:午前9時~午後5時(入園は午後4時30分まで)
※イベント開催期間などで時間延長の場合もあり
●休園日:年末年始(12月29日~翌1月1日)
※イベント開催期間及びGWなどで休園日開園や時間延長が行われる場合もあり。
●入園料:一般(中・高・一般)150円、65歳以上70円
(小学生以下及び都内在住・在学の中学生は無料)
※20名以上の団体は2割引き、その他障害者・介助者特別料金あり
●その他:洋館建物内の見学は、往復はがきによる事前の申し込みが原則。
※詳細は問い合わせを。洋館・茶室の管理は(財)大谷美術館03-3910-8440
●URL:http://www.tokyo-park.or.jp/park/format/outline034.html